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第38回溶液化学国際会議(38th International Conference on Solution Chemistry)報告
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山口敏男

 第38回溶液化学国際会議(38th International Conference on Solution Chemistry)は,2023年7月9日(日)から14日(金)にかけて,セルビア共和国のベオグラード市にて対面式で開催された。この会議は2019年に中国Xining(西寧)市で第36回会議が開催され,2021年にコロンビアのカルタヘナ市で開催予定された第37回会議はコロナ禍により延期されて,2022年に完全オンラインで開催された後に,4年振りに対面式で開催された。会議は,Ljubljani大学のMarija Bešter-Rogač教授とNovi Sad大学のSlobodan Gadžurić教授の両実行委員長のもと行われ,世界中の国々から140名程の参加者により,ポスター46件を含む計86件の講演がなされた。

 会議初日の夜には,歓迎レセプションが緑の木々に囲まれた5スターHotel Metropol Palaceのテラスで行われた。4年ぶりの旧友との再会や新しい参加者との出会いを楽しんだ。会議2日目午前は開会式の後,3つの会場に分かれ,以下に示す10のセッションの講演(括弧内はContributed talk数)が行われた。

  1. イオン液体 (16件)
  2. 溶液の熱力学(10件)
  3. 溶液中の生化学効果(0件)
  4. 溶解現象と相平衡(7件)
  5. 溶液の構造とダイナミクス(13件)
  6. 超臨界流体と極端条件下の溶液(2件)
  7. コロイドと界面(9件)
  8. 計算溶液化学(4件)
  9. 溶液化学一般(5件)
  10. 溶液の工業的応用(1件)

各日程の最初には、各分野の大御所たちによる以下のPlenary talkがなされた。

T. Welton  Why are ionic liquids so viscous?
Y. Jiang Probing interfacial ion-water interaction with atomic resolution
L. Vega Hunting sustainable energy-the role of solution chemistry and computation on finding optimal solvents for CO2 capture
鳥居 肇 Roles of electrostatics and intermolecular electronic motions in the structural and spectroscopic features of hydrogen- and halogen-bonded systems (録画講演)
S. Ražić Between green and white analytical chemistry-Greener solvents, from solutions to applications in complex matrices
R. Rogers Solution processing of terrestrial and marine biopolymers can overtake melt processing of plastics and lead to more sustainable materials

その他に,各セッションのはじめに13件のkeynote lectureがなされた。日本からは,阿尻雅文教授(東北大学)によるSupercritical hydrothermal reactions-Basics and applicationsがなされた。講演件数は,イオン液体とDES (Deep Eutectic Solvent)が最も多く,続いて溶液の構造とダイナミクス,溶液の熱力学,コロイドと界面の順であった。いずれの会場でも,講演後に熱心な質疑応答がなされた。対面式の会議の意義と重要性を改めて認識した。会議4日目の午後はバス2台に分かれて2時間かけてドナウ川沿岸、セルビアとルーマニアの国境にあるGolubac Fortress(Iron Gate gorge峡谷)観光を行った。今年のヨーロッパは熱波により40℃以上の気温で,ベオグラード市もホテルの外では37℃のうだるような暑さであった。冷房の効いたバスでの2時間の旅行中、ガイドからセルビアの歴史を学ぶことができた。その夜のバンケットは,サバ川河畔のセルビアの伝統料理をふるまうレストランを借り切り行われた。セルビア民謡の歌と踊りのアトラクションがあり,またレストラン内を参加者が手を取り合ったダンスで大いに盛り上がった。バンケットの恒例行事として,5名の若手の研究者にポスター賞が発表された。賞状の他に副賞としてSpringerから図書券が贈られた。日本からの参加者は,Plenary lectureをされた鳥居肇教授(静岡大)(録画講演),keynote lectureの阿尻雅文教授(東北大),Oral talkの細川伸也教授(熊本大),神崎亮准教授(鹿児島大),梅林泰宏教授(新潟大),韓智海助教(新潟大),森 寛敏教授(中央大学),山口敏男教授(福岡大,中国科学院青海塩湖研究所),Poster発表の黒木菜保子助教(中央大学),渡辺啓介助教(福岡大)・照山友登M2学生(福岡大),細川教授の奥様の12名であった。第39回溶液化学国際会議は,2025年9月7日—12日において, チュニジア共和国のモナスティル(Monastir)市,Jalel Mhalla教授(Monastir大)とAdel Megriche教授(El Manar大,チュニジア化学会副会長)の両委員長のもとで開催される。また,国際溶液化学組織委員会にて第40回溶液化学国際会議の招聘プレゼンがなされ,2027年9月にイタリアのローマ市でPaola D'Angelo教授の実行委員長のもとで開催されることが決定した。以上。

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